いい日本美術が見たい! 出光美術館 編 [日記]
出光美術館では、「長谷川等伯と狩野派」展がやっています。
狩野派と長谷川等伯・・・おお~!因縁の対決!ですね~
出光美術館ってすごい企画するな~
等伯と永徳、びしばし火花が散っているようです・・・汗
すてきにオシャレな図録です。
私は個人的に初期狩野派は、すごく好きです。
だいたい、探幽まで。汗 っていうか、初期の主要メンバー5人しかわかりません。
ところで、狩野派と、長谷川等伯ってなにかそんなに因縁の対決なの?
とお思いの方、松林図屏風で有名な長谷川等伯は、
御用絵師・狩野永徳の時代の天正18年(1590)に、御所対屋の障壁画を”はせ川というもの”に描かせないで欲しい、と直訴して、長谷川派の御所への参入を阻止したり、
等伯は、千利休と影で、狩野派の悪口を言いふらしたり、
なかなか熾烈な権力争いがありました。
で、永徳が死に、20年後に等伯が死ぬまで、長谷川派の影響を狩野派もたくさん受けるようになっていましたが、
等伯死去の2年後に生まれた狩野探幽によって、長谷川等伯の存在は、日本の美術界から完全に抹消されてしまうのです。
で、その証拠のひとつともいえる屏風が今回展示してありました。
竹虎図屏風(出光美術館ホームページより参照)長谷川等伯です。
この屏風が右隻、左隻にも、虎と、竹が書かれているのですが、
その左隻の左端の扇の紙中極には、
「竹虎絵屏風一双周文 真筆両片破損之処 加予筆令作補者也 探幽斎書」
とあって、探幽は、この絵は周文の絵で、屏風の両側が破損していたので、自分が書いて直しておいたと、鑑定書のような物を、屏風の中に書き付けています。
これは、日本美術に詳しい方に聞いたのですが、探幽は等伯の絵だとしっていたけれど、わざと、周文の絵だと描いている。ということでした。
それは、図録によると、狩野派が、江戸幕府の御用絵師になって、探幽が、その基盤を固めようとするときに、長谷川派の絵の影響を狩野派の中からも、また、公式絵師の中からも、排除しようとした形跡なのでは・・・と書かれていました。確かに、狩野派は、この後、農民の耕作図を除いて、ほとんどの風俗画(長谷川派のお家芸)をやめてしまっています。
とまあ、そういった、狩野派と長谷川派の確執は、さておき、この両方を出せる、出光美術館って、すごいな~と思いました。
それから、肝心の絵のほうですが、長谷川派の影響を強く受けている狩野長信の屏風が展示してありましたが、
日本美術史に詳しい、方の解説によると、
「桜・桃・海棠図屏風は、長信となっているけど、彼の花下遊楽図と比べると、作風があまりにちがうし、落款印章もないから、断定できないのでは・・・」
と、こちらでも、なにやら、日本美術史界の火花を散らしていました。
私が今回、見ていて一番、長いこと見ていたのは、「大阪夏の陣図屏風 長谷川等意」で、
合戦図なのですが、なんか、すごく生々しい感じです。
首を切られた武士が身ぐるみはがれて、丸裸で戦場の真っ只中に転がっていたり(で私は、とられた首の行方と、鎧の行方を結構探したけど、見つかりませんでした。汗)、戦火を逃れるように逃げる民衆とか、とにかく、血まみれなのです。
なんで、こんな絵をわざわざ屏風にするのかな~と思ってしまいますが、そんな私も、やっぱり、どうなっているんだろう~と覗き込んでしまうので、やっぱり、みんなこういう血なまぐさい絵には、なにかしら、ひきつけられてしまうのかも・・・妙齢のご婦人方も、必死に絵をご覧になっていらしたから、女性にも、人気がある題材なのかな~と思いました。汗
それから、「麦 芥子図屏風」 狩野重信の作ですが、
麦の方は、金地に緑の麦、奥に茶色の麦で、奥行きのある表現がされているのですが、出光美術館の照明がすばらしいのか、奥の茶色の麦が暗くなって、金地が下のほうで光ることによって、夕日の中の麦畑にいるような、すごく写実的な感覚を受けました。手前に緑の麦があることで、奥の麦が、まるで、逆光の中に浮かんでいるように見えました。
それから、長谷川派の柳橋水車図屏風は、たくさんかかれて、現在も似たような形式の屏風がたくさん残されていますが、薄墨の水の表現と金泥の使い方は、ちょっと斬新で今見ても、クールです。金雲の上に、緑の柳の葉がぞっとするような色気を出しています。(一番上の写真部分図)
というわけで、出光美術館、すごいですね~本当にすごい。
お茶をいただけるコーナーからの皇居の眺めもほんとうに、すごいです。汗
いろんな確執があるものですねヾ(´▽`;)ゝ
by nano (2011-11-22 15:24)
nano さん。
まいどです!コメントありがとうございます!
そうですよ~長谷川派と狩野派の話は、政権争いみたいで、
はらはらしますね。
でも、”ある時期まで”お互いに絵画的には影響を与え合っていたのが、良く分かります。
長谷川派は、いまみても、なかなかオシャレな装飾性が感じられます。
(#^.^#)
by koji (2011-11-25 10:51)