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梨木香歩著 「僕は、そして僕たちはどう生きるか」 [読んだ本]

梨木香歩氏の本は、最近、「ピスタチオ」を読んで、奇跡があってもいいと思える、

「縁」という物の存在を、意識しているなあと、読んでいましたが、

今回の「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は、実は、理論社のウェブマガジンで、更新の遅いのをじりじりしながら待って読んでいた作品でした。

そして、理論社が経営破たんして、そのウェブマガジンも途中で終わってしまったので、この作品がどうなってしまうんだろう・・・と気をもんでいましたが、理論社は、また復活してとうとう、この本も刊行されたようでした。

そして、この「僕は、そして僕たちはどう生きるか」ですが、

主人公のコペルくん(日本人で、中学生)と、その友達、ユージン(日本人で、中学生)本人達と、彼らをめぐる人々の「生きる意味を考える」という話だと思いました。

この本は中学生向けだと聞きましたが、内容があまりにショッキングなのと、本当にわかるんだろうか?という気がしましたが、

私も昔、中学生だったことがある経験からすると、胸を締め付けられるようなエピソードたち、

それでも、人は明日に向かって生きようとするこころ、そんなところに強く勇気付けられるような気がします。

はっきり言って、私は、コペル君の側ではなく、ユージンの側の人間です。

世の中はユージンのことを、弱いとか、世の中はそんなに甘くないとか、強くなれとか、説教したくなると思うけど、

それでも、彼の心の震えは、今でも、私の中にもずっとあって、切なくもいとおしい心の震えなのです。

私は、大人になって(本当になれているかわかりませんが)、そういった境遇にある全ての中学生に、

どうか死なないで、そういう苦しさを乗り越えた君たちだけが、本当に人の痛みがわかる、慈悲という物がわかる、上品な人物になれるはずだと、言いたいです。他人の痛みがわからない人間は下品だと私は思っています。他人は、たわごとだというかもしれないけれど、それでも、自分の心の震えをいとおしく思ってください。きっといつか、中学生だったときの自分を、懐かしく、そして、いとおしく振り返る日が来るはずです。そのときに、ああ、自分は何も悪くなかった、そして周りの人たちもなにか理由があった。一生、許せないかもしれないけど、それを抱えて生きる道もある。と思えると思います。

松任谷由実さんは、「水の影」という曲のなかで、「けれど、傷つく心を持ち続けたい・・・」といっています。

今年は、大地震があって、多くの人が、どうしたらいいんだろうと、苦しんでおられると思います。そんなときに、この本は、何を甘いことを言っているか!としかられてしまうかもしれません。

それでも、例えば、福島の原子力発電所が撒き散らした、人を殺すほどの猛毒の放射性物質に対する政府の対応、放射性物質をふくむ食品に対する人々の対応、事故を起こした原子力発電所の被害を受けている地域の学校に通う子供達の周囲の対応、それらに対して、

みんなががんばっているから、自分だけ逃げられないとか、みんながしんぼうしているから、文句は言えないとか、そうやって、我慢している方たちのことを思うと、

発言できない世の中がおかしいと、私は本当に思います。発言の自由はあるのです。”思いやりを持って”という善意に頼っているとしても、何も言わないことが、結局は何もかもダメにしてしまうと思うのです。自分自身の心も、そして、世の中の人の痛みのわからない人の心も。

だから、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」と、問いかけていくことをあきらめてはダメなんだと、強く思いました。

最後の最後に、コペル君が言った三行の言葉が、

私の中の中学生だった自分の深く届いて、図らずも涙をこぼしてしまいました。

あれから、ずっと、私が欲しかった言葉だからです。

そして、私は、やっぱりコペル君の側の人間じゃないと確認させられたからです。


2011-12-27 13:14  nice!(17)  コメント(10)  トラックバック(0) 
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コメント 10

nano

若いうちから考える力を
養うことは本当に大事ですね?
by nano (2011-12-27 14:33) 

般若坊

ご来訪ありがとうございます。これからも宜しく!
沈黙は金である場合と、無気力の象徴である場合があります。でも自分たちの思う事を口に出すのは、金に勝りますね!
by 般若坊 (2011-12-27 18:17) 

whitered

梨木香歩さんは、大好きな作家です。ぜひ読んでみたいです。
by whitered (2011-12-28 10:07) 

koji

nano さん。
まいどです。コメントありがとうございます。
そうですね。若いうちから自分で考えるということは難しいと思います。
それでも、中学生ぐらいになって、いろいろなことに疑問を持ち始めたときに、
周りの大人たちは誠意のある対応をしなくてはいないと思います。
また、友人同士でも、「みんながやっているから・・・」という雰囲気に流されないで、心の中だけでも、おかしいと思うことに疑問を持ち続けて欲しいと思います。
とても難しいことだとお思いますが、それが、結局は自分の魂を養うことになるのだと思います。
by koji (2011-12-28 18:24) 

koji

般若坊 さん。
まいどです。コメントありがとうございます。
そういう考え方もあるとおもえます。
多くの人が心の中にぐっと抱え込んでいる、”集団”という意識的な力にたいする不安のようなものを、いかに、認識するか、
それによって、世の中は、少しだけでも良くなるのではないかと、
信じたくなります。
by koji (2011-12-28 18:27) 

koji

whitered さん。
まいどです!コメントありがとうございます!
そうですね!私達、梨木さんの本、好きですよね。
女性にとって、かなり苦しい記述の部分がありますが、
是非読んでみてください。
by koji (2011-12-28 18:29) 

般若坊

年末のご挨拶
今年も押し迫ってまいりました。
東日本大震災の発生と大津波、およびそれに起因する福島原発放射能漏えい事故等々、はっきり言って暗い世相の2011年でしたが、so-netブログに集われた皆様との明るい交流に救われた感じです。
今年一年のご厚誼に感謝申し上げると共に、貴ブログの益々のご発展を祈念しまして、年末のご挨拶といたします。どうぞ良い年をお迎えください。

by 般若坊 (2011-12-28 21:31) 

mitsu

happy new year!
今年もステキな一年でありますよーに^^
by mitsu (2012-01-01 12:13) 

koji

般若坊 さん。
まいどです。コメントありがとうございます!
本当にそうでしたね。
皆さんの、ブログに励まされましたね。
ありがたいことですね。
すばらしい、一年になりますように!
by koji (2012-01-02 14:25) 

koji

mitsu さん。
まいどです。コメントありがとうございます!
mitsu さんにとって、すばらしい一年になりますように!
by koji (2012-01-02 14:29) 

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