名古屋ボストン美術館 日本美術の至宝 展 [日記]
先日、名古屋ボストン美術館へ 「日本美術の至宝」展を見てきました。
図録です。曽我蕭白の龍の襖絵が表紙になっています。
この表紙の蕭白が、日本美術の至宝なのかといえば、それほどでもないのですが、
平安時代の仏画と言われているものは、確かに至宝っぽい、雰囲気を出していました。
昨年、根津美術館で春日曼荼羅の展覧会を見てきましたが、今回の展覧会にも、1点、春日宮曼荼羅が入っていました。
例の中庭の杉も書かれていました。図上方に山と月、まっすぐ伸びる参道など、定型のように見えますが、違うそうです。
こちらは、絹本で、かなりばらばらになっていましたが、額装になっていたので、軸装よりも安全かもしれません。
茶色く変色した絹のなかに、鹿を探しましたが、見つけられませんでした。笑
吉備大臣入唐絵巻の部分図です。(図録から)こちらは、至宝ですね。笑
平安時代の絵巻物だそうです。紙本で、こちらもかなり傷んでいましたが、丁寧に修復されて、古くて消えちゃったのか、欠損して、修復した部分なのか、わからないぐらいに細密に直してありました。
そして、絵巻物は、人物の描写が生き生きとして面白く、それぞれに表情豊かで見ていて、楽しい絵巻物でした。
唐の皇帝の玉座の後ろには、平安時代の室礼のような、山水の襖絵(屏風?壁貼り付け)が描かれていて、瑠璃色の額縁部分が、源氏物語絵巻の襖と同じような表現の仕方で、興味深く見られました。
平治物語絵巻、三条殿夜討の巻、部分図。(図録より)
戦記物の絵巻は、やはり女性に人気がありました。
かなり長い列になっていましたが、並んで私も見ました。
人物がかなり密集して描かれているので、何が描かれているのか、よく見ようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。なので、流れが遅くて、列が長くなってしまっていたのだと思います。
こちらの絵も、生々しい描写で、、牛車の黒い漆の色と、鎧の小札(こざね)の黒が、なんとも不穏な雰囲気を醸し出しています。
御殿が炎上するシーンでは、炎を含んだ煙が赤黒く表現されていて、恐ろしいほど写実的でした。
印象的だったのは、この写真上中央の鎧武者の部分で、後世の補筆だと思いますが、そのまま、残してあって、日本の場合だと、オリジナルの部分だけを残して、後世の修復部分は取り除いてしまうので、興味深かったです。
今回、一番、面白かった狩野永納の 四季花鳥図屏風。(図録より)
こんな写真の紹介でスミマセン。汗
狩野永納は江戸狩野ではなくて、京狩野の3代目です。山楽、山雪と面白い絵を描いてきた京狩野ですが、
その雰囲気を濃厚に残した、金屏風でした。
右隻のまがって直立する松の面白さ。
座った視点で、左隻を眺めると、手前の雁が遠くの雁と鳴き交わす、屏風独特の立体的な構図、梅の枝には薄く雪が積もっていて、その右から3扇目の梅枝の雪はわずかに、枝から浮かんでいて、まさに雪の結晶まで表現されているような、繊細さ。
京狩野の大画面の中の極限まで細密な追求は、近づくほどにそのすごさがわかって面白いです。
今回の展示は、低い位置に展示されていたので、会場が混んでいないなら、しゃがんで、座った視点を楽しんでみるのもいいかもしれません。
というわけで、長谷川等伯とか、狩野元信、永徳など、大物の絵もたくさんありました。汗
今話題の伊藤若冲は、落款なし印2つの水墨画がありました。
曽我蕭白は、これから売り出そうとしているのか、会場の多くのスペースをとっていましたが、そんなにすごい・・・と思う彼の作品は、あまりなかったような・・・・
それに比べて、同時代と言っていい、応挙、長沢蘆雪はまったくありませんでした。汗
平安時代から明治時代まで、幅広くそろえてあったので、個人的にはなかなか面白い展覧会だったと思います。
会場は、ホームページにも書かれている通り、絵の保護のために寒くしてあるので、冷房の苦手な人は上着が必要だと思います。笑(5階展示室は本当に寒い)。ストールの貸し出しもしていましたので、ふらっと立ち寄っても大丈夫だと思いますが・・・
修復技術や作業、ホント大変でしょうね(-"-;)
by nano (2012-08-09 14:44)
nanoさん。
まいどです!コメントありがとうございます!
本当にそうですよね。平安時代のものなんて、どうなっているかわかりませんよね。汗
最近は光学エックスセン調査などで、多少は顔料などが、わかるようになってきたようですが、それでも、未検出が続発していようなので、関係する方々には、頑張ってもらいたいですね~(#^.^#)
by koji (2012-08-11 10:17)
ボストン美術館は、本当にいい絵をたくさん所蔵していますね。私はこの中では、吉備大臣入唐絵図が好きです。頭を垂れた人の後頭部の描き方なんてリアルですよね。
by whitered (2012-08-12 09:40)
whitered さん。
まいどです!コメントありがとうございます!
本当にそうですね。明治時代に、流出してしまったと考えるか、散逸を免れたと考えるかは、微妙なところですが、
こうやって、今でも異国で大事にされているのを見て、ほっとした感もあります。
吉備大臣入唐は、面白いですよね。視点が独特で、私もこのうずくまる人の描写がとても気になりました。絵巻物の中には似たような姿勢の人が展示されている範囲で、2(3)人いて、この絵師の得意技だったかもしれないですね。柔らかい筆遣いで、描かれた当時でも、すでに昔のお話だったことを考えると、興味深い表現だと思いました。(#^.^#)7
by koji (2012-08-13 12:23)